7月13日 武蔵小金井アートランド
 記憶薄で時系列がややめちゃくちゃ。
 リズムマシンからビート。「近所に内木歯科ってあるんだけど、内木歯科の看板の下に、これ、そう、ナイキのマークが書かれていたっつーわけよ!」とラップしながらライブ開始。「今日は60分間の演奏時間を与えられているということで、若干いつもより長い、というわけで、アンビエント的な演奏をしようと思ってるんですが、まあね、演奏時間は長ければ長いほどいいので、本当は八時間くらい欲しいのですが、今日は演奏時間が若干短いということで、あっ、違います、若干長いということでね!」と思わず本音を漏らしながらコンポジションをもたもた準備する。準備中、お客さんに満面の笑みで「どこから来たの?」とたずねる。「今日はおれなりのコミュニケーションでお客さんと親睦を深めようと思う。どこから来たの?」「練馬です」「(横の人に)どこから来たの?」「練馬」「(さらにその横の人に)どこから来たの?」「えっと、練馬」「おいおい練馬ばっかりだな。よーし、練馬の人だ〜れだっ!(といって手をあげる)」しかし、反応無し。
 振動させたスピーカーの上にプラスチックの破片やボルト、金属片などを投入する。スピーカーにつながれたコンポのCD挿入部分が、調子が悪く何度もオープンする。その度に、オープンした挿入部分に掌底を叩き込んで、無理やり押し込んでいく。「いいか?一見、この(と、スピーカーを指差しながら)演奏が重要に見えるだろう?違うんだよ!(オープンする挿入部分を押し込みながら)こっちこそ見て欲しいんだ!偶然音楽なんだよ!現代音楽でいうところのチャンスオペレーションががんがん発生しちゃってるわけなんだから、むしろこっちがメインなんだよ!押しこんだるわーい!」といって、コンポに突っ張りを入れまくる。「大事なコンポについ暴力的になってしまった……おい、コンポを作った人に謝れよ!すいませんでした。ここで、じゃあ製品番号クイズいっちゃいますか!(反応なし)」スピーカーの上で跳ね回る破片が出す音をマイクで拾い、リズムマシンの音を消す。ピックアップも投げ込み、破片が触れ合う音に、ピックアップの接触音もアンプリファイされる。破片を投げ入れたり取り出したり、スピーカーを手で押さえて音を止めたりする。「日照りじゃ〜!」と叫び続ける。壁を叩きながらラップする。
 「三国志のネクストステージを考えていこう。これまでいろいろ三国志のバリエーションを生み出してきたおれが提供する次の三国志は、3.1国志だ。これがどういう物語かわかるか?3はわかるが、残りの0.1とは?それは、三国の壮大な物語と平行して、一人の村人の個人的な物語が展開するんだ。まだある。プラマイゼロ国志。これは一体どういうことだろう。ちょっと今から考えます」といいながら、考え込み「プラマイゼロ国志ってなんだと思う?」と客にたずねる。「おれはね、これを十年やってるんだ。これでMステに出演するつもりでいるんだ。こんなヒップホップ見たことないだろ?新しいよね?まあ新しいかどうかはどうでもいい。おれはこれを十年かけて、最高の芸術としてやっているんだ。おまえら、プラマイゼロ国志をがっつり人前で考えるのを芸術として十年できんのか?」
 客の反応を意識してか、再びビートを再生し、ラップし始める。「夏の海、君と出会った湘南、打ち寄せる波打ち際!ゆれる想い!こういうのがヒップホップだよね。まあちょっと、違うかもしれないけど。(スピーカー振動のコンポジションを再開し)これをヒップホップと言われるよりはみなさんの考えるヒップホップに近いよね。こっちが好き?こっちのがいい?じゃあこっちでいこう。」と、しばしビートにあわせて海をモチーフにしたリリックを叩きつける。甲高い声で「ハイー」と言いながら「リリックの最後に合気道を挟み込むことによって韻が踏めちゃうという寸法よ、ハイー!」と後韻説明ラップ。しばし合気道を挟み込んでいたが、「この後韻あまり気に入らない」といって、新しい後韻を考案する。その結果「正義は勝つ!な〜んてネッ!」という格闘ゲームのキャラの勝利ボイスとアクションが後韻となる。
 とつぜん声色を変えて、「配膳はな、楽しいんだよ!」と言い出す。「このリリックはおれがプリンスホテルで配膳のバイトをしていたときに上司が放ったリリックだ。配膳はな、楽しいんだよ!どういうことだと思う。配膳やってて、(大げさに転倒しながら)おれはこれしちゃったのよ。で、料理ぶちまけて。(大げさに転倒して)これしちゃったのよ。それで上司が配膳全員集めて、このリリックよ。おまえらはさ、配膳を本気でやってないんだよ。本気でやればな、配膳はな、楽しいんだよ!」
 満面の笑みで「普段どんな音楽きくの?」と客に尋ねる。「音楽聴きません」という反応に、「音楽聴かないほうがいいよ!坂本龍一が赤ん坊のように何も知らないほうがいいものを作れるって言ってたからね。少しでも音楽を聴いてしまったなら、もうどんどん詳しくなるしかない。これは坂本龍一の持論であっておれの意見ではない」と返答する。そして、さらに「どこから来たの?」と尋ねながら、マイクスタンドでインスタントな檻を作る。「こっから先には出ませんので、安心してライブをご覧ください!(マイクスタンドの柵から顔を出して)じゃあ、3リットル国志にいってみようか。どんな国志だと思う?わかった方には3億円を贈呈します!わからない?わかりませんよね。残念でした、3億円のほうはユニセフに全額寄付させていただきます。」再び「どこから来たの?」とたずねる。「足立区です」という返答に、大阪のお母さん風の喋り方で答える。「足立区って、よう知らんわ〜。影が薄い区ってあるよなあ。足立区ってそれやわ〜。足立区って何駅がある?北千住?ああ、北千住あるわなあ。でも影薄い区ってあるよなあ。ほかになんかあるやろか。江東区?あ、江東区影薄いよなあ!江東区言われてもピンとけえへんよなあ!」さらに、尻を突き出した限りなく不恰好な姿勢で「プレイボール!」「アウトー!」「セーフ!」とアンパイアのカバー。もちろん、マイクスタンド越し。
 コラージュの技法を利用したサッカー。紙一面に「キックオフ→ドリブル→競り合い→パス→ファール→ドリブル…」とサッカーの試合のプロセスが書き込まれている。それを高速カットアップの要領で一気にプレイし、一試合を30秒程度のコラージュ音楽にしてしまう。ピックアップを装着したボールでもって演奏。一回演奏した後「ここで、カズダンス、ビスマルクいれて、最後にトルシエコールを挿入しよう」とコンポジションの書き換え。再び、演奏開始。ボールとの格闘の末に短い「トルシエッ」という叫び。ライブ終了。

7月14日 新大久保アースダム
 リズムマシンから変拍子のビート。「川染喜弘です!新大久保で究極の芸術が巻き起こっちゃうんだ!ここにきたお前ら全員ラッキーじゃ!伝説に立ち会っているんだ!いこうぜシーブヤー!」
 「夏が始まってるんだよ。日常に襲い掛かる逆境に負けないように、お前らハッピーでいこう!」といって、風船に水を入れた方のヨーヨーを使ったコンポジション。ヨーヨーをバツンバツンやりながら「このヨーヨーの音をキックと捉えてほしい。お前らの大好きなBPM120くらいの音楽だと思い込んでいけ。よし、これをビートにヒップホップしてやるよ!(リズムマシンのビートを消し、ヨーヨーのリズムにあわせて)ヤベー!シビー!カッキー!イカチー!ワカリニキー!ヤベー!シビー!カッキー!イカチー!ワカリニキー!(たまにヨーヨーが手のひらに当たらず空転する)オッケー、これは現代音楽でいうところのチャンスオペレーションなんだよ!温野菜の、カルパッチョ!冷やし中華と、カルパッチョ!温泉野菜の、カルパッチョ!」ヨーヨーをくさり鎌のように振り回し、会場をやぶにらみする。吹っ飛んでいったヨーヨーを能動的なお客さんが拾い、手に装着しようとするのを見て「いけるのか?お前、ビートやれるのか?オッケーいこう!ドラムを担当してくれる、トム君だ!今日はマツモトキヨシのバイトあがりに来てくれちゃってます!」と紹介する。
 お客さんにヨーヨーを任せたまま、別のお客さんに「おばさん」と「おねえさん」と交互に呼びかけるように指示する。「おばさん」と呼ばれると不機嫌そうに「あ?」と答え、「おねえさん」と呼ばれたときは最大限に媚びた高い声で「なぁに?」と答えるミニマル演奏。しばし、繰り返したのち、スーパーボールを入れた筒にピックアップをつけたものを振りまくる演奏も加えられ、お客さんのヨーヨー、おばさんおねえさん問答、スーパーボールの音が同時に鳴る。アンプにあてがった筒に耳をあてて、集められた音を聴くように観客に要求する。このとき、ゴム手袋をオペの前の医者の形態模写でもってはめるシーンがあり、実にすばらしい動きをしていた。水をつけたゴム手袋でもって筒をスクラッチする。
 木琴のバチを使ってリズムマシンをたたき、木琴の音を出す。「もう木琴はいらねえんだよ!おれには木琴のバチがあるんだよ!ちょっとチルアウトタイムいっちゃおう」としばしリズムマシンをたたき続ける。無論、ヨーヨーの彼も常にヨーヨーで四つ打ちを刻み続ける。
 13日に続き、「どこから来たの?」と客に尋ねまくる。「どこから来たの?えっ、吉原?吉原ってどこかわからんわ〜。えっ東京なん?東京なん?うち東京疎いねんな〜。吉原ってどこかわからんわ〜。あんたはどこからきたの?東京?あたしもなぁ、18ん時に上京してきてんけどぉ、東京って何もわからんかったわあ。自動改札機ってあるやん?あれ、最初わからんかってんなぁ。ちゃんとお金払ったのに、目の前で改札機が閉まるやんか〜、うちめっちゃびびってもうて、あかん、もしかして逮捕されるんちゃうやろか、とか思って駅員さんに聞いたら十円足りんくて。最初はそんなんわからんよなあ。あとなあ、東京って小3の時に一回家族で来てるやんか〜。いとこのお兄ちゃんの結婚式で来てんねんけどー、そんなん小さすぎてわからんやんな。そんでなあ、家族で東京タワーに行こうってゆうててんけど、行ったら東京タワー閉まっててん!九時で閉まってしもうたんや。行ったのは八時五十五分やったからなあ。めっちゃへこむやろー?」と一人の客に執拗に絡んだあと、次のコンポジションに行こうとしたのかなんなのか、突如踵を返し、その瞬間、滑って激しく転倒する。「チャーンスオペレイショーン!」と叫んで、再び今度は意図的に豪快に転倒してみせる。
 突然鳴っていたビートを止めて、一人のお客さんに向けて笑顔で「ちょっとうるさいよね」と言う。「ヒップホップここまできちゃったよ!いやー、見たことないでしょ?乗りに乗ってたビートを『うるさいよね』といってとめちゃうやつみたことないでしょ?考えようぜ、オニャ〜(と気が抜けるような声でいって、空中に蹴りをいれる)。オッケー、本日の後韻はナムコの格闘ゲームキャラクター、マーシャル・ロウが蹴りを放つときに発生する「オニャ〜」だオニャ〜!」
 「コンポジションをひとつやり忘れていた」といって、会場の真ん中に紙コップを置く。そして、猛然と紙コップの周りを走り回りながら「雨ふれ雨ふれわっしょいわっしょい」と叫ぶ。「ライブ中に雨乞いしちゃうのよ。新しい音楽を作るのにマッキントッシュはいらないんだオニャ〜。みんな新しい音楽作ろうと思ってマッキントッシュ買うでしょう?でも紙コップひとつあればいいのよ。そんで雨乞いしちゃえばいいんだオニャ〜!雨雨ふれふれ!むぴょこぴょこ!雨雨ふれふれ!みぴょこぴょこ!聖なる宇宙の神よ、この紙コップのみに雨を降らせたまえ!考えてみろ、この紙コップに雨が降ったら、水がのめるんだぞ!雨雨ふれふれ!」
 もはやここ数ヶ月定番と化した前衛メロコアシリーズ。いつものようにメロコアと川染の因縁を説明する定型リリックを叩き込み、「今日お前らにたたきつけるのはホーミーメロコアだ!」といって、メロコア的としか形容できない歌唱をすべてホーミーにする。そして、ストップ&ゴーを多用して何度も繰り返しダイブする。ダイブ後の歓声もホーミー。
 「お前らにリリックをたたきつけてやろう!おれのおかんは占い師なんだオニャ〜!家の本棚にはずらっと白魔術の本が並んでいて、その横の棚には、黒魔術の本が並べられていたんだオニャ〜!お前は何魔術師なのかと、赤魔術師なのかと、そんなやばいサイケデリックなおかんなんだ、おれのおかんは。俺が小3のとき、そのおかんがおれの靴底になぜか猫の絵を描いて登校させてたんだ。めっちゃ恥ずかしいよね!(靴底を見せながら)ここに猫の絵が描いてあったんだからオニャ〜!体育すわりとかしてても、速攻で靴の裏が見えないように隠すほかないよね!オニャ〜!それでおれはずっと、何で猫の絵があるのか疑問だったわけだ。何年かたって、おれはある日、本棚にある一冊の占いの本を見てしまったんだオニャ〜。そこには、そう、こう書いてあったんだオニャ〜!『子供の靴に猫の絵を描くと、子供が交通事故にあわない』猫の絵、めっちゃ恥ずかしい猫の絵、あれには母親の愛情がつまっていたんだよ!おれが交通事故にあわないように、おかんが描いてくれた猫の絵……。でも恥ずかしいことには変わりはないんだ。そんなおれも中学生になって、思春期だよね。おれは中学校にあがったと同時におかんにこう言ってしまったんだ。『もう靴の裏に猫の絵を描かないでくれ』と……!おかんの愛情を、思春期のおれが!この気持ちがお前らにわかるか?(客から『せつない!』という声)(それを受けてフリーズした川染、ややあって笑顔で親指をたてながら)オッケー!せつない!いいぞおまえ!それでいいんだ!」
 再びホーミーメロコアを再開し、ダイブにつぐダイブを敢行し、ライブ終了。ヨーヨーの彼は最後まで演奏し続けました。すばらしい。

7月25日アートランド
 主催者の用意した映画を見、それにレスポンスするというしばりのライブ。鈴木則文監督の実写版「ドカベン」を鑑賞してから、川染喜弘のライブ。30分くらいのライブでしかも徹夜明け朝四時のパフォーマンスだったので、意識を半分朦朧とさせながら聞いていたので、思い出せる範囲で簡単に書きます。
 「まあね、僕も前衛オペラ追及してきたけども、この『ドカベン』、今日初めて見たわけだけどね、こういうのに共感はあるよね、一ミクロンくらい。ないといったら嘘になるよね(と、筒を口にあてて息を吹き込みディジリドゥーの音を出しながら)、オッケー、本日の前衛ヒップホップの後韻は、ラップの最後に拾ってきた筒でディジリドゥーの音を出す、だ(と、筒に息を吹き込み音を出す)」
 実写版ドカベンに登場した人物を一人だけ登場させて前衛オペラを展開する。内容は良い意味でしどろもどろだったために忘れましたが、ピックアップで拾っていた音がとてもよかったのでそっちを重点的にレポします。一応あらすじは、「油性ペンのキャップきゅぽきゅぽ選手権大会が開催されるにあたって『お前は油性ペンキャップきゅぽきゅぽの本質をわかっていない。やってみろ!違う!』」といった内容だったと記憶してます。ピックアップに装着した油性ペンをきゅぽきゅぽやる音をアンプリファイし、その音をMTRに取り込んでその場で録音していく。「お前はきゅぽきゅぽをナメている」といって、「きゅぽきゅぽに突入する前にこれをやってみろ」と発泡スチロールの板を用意する。そして、その発泡スチロールの板にピックアップを装着し、引き千切ったりこすったりする音をMTRに取り込んでいく。
 取り込んだ音をMTRから再生しながら、オペラを展開していくが、ライブ終了時間が来てしまう。納得がいかなかったのか、「全部説明してやろうか?」とライブ内容をレクチャーし始める川染。「わかりにくい表現をしすぎた。4000年早かった」という旨をバリエーションを変えて何度もしゃべくっているうちに、どんどん時間が過ぎていく。そのままの空気でライブ終了。終了後も納得のいかない様子でした。

7月28日円盤
 リズムマシンからビート。自己紹介&自分の作品に関する詳細な説明のラップ。「(リズムに合わせて激しく動きながら)こんにちは!今日はじめて川染喜弘のライブを見る人のために、川染喜弘について説明してこう!1977年香川県生まれ、いま30歳、今年で31歳になります川染喜弘です!(突如激昂して)うるさいわ(と、リズムマシンから流れるビートを荒々しく止める)!まあね、こうヒップホップを追求して追求して研究したおして十年やってるわけだけど、《うるさい》の一言で自分のビート止めちゃう奴見たことないでしょ、見たことあるのけ!オッケー、本日の前衛ヒップホップの後韻は広島便の『け』だ!これをすることによってすべてのラップの韻が踏めてしまうという寸法なんじゃけ!ダンボールにガムテープ貼ったのけ!タンスにガムテープ貼ったのけ!これは引越しのバイト先の先輩が、すべての語尾に『け』をつけていて、お前はいったい何弁なんじゃ!と怒り、調べたところ広島弁ということがウィキペディアで判明したけ!(腰を前後させながら手を動かし)これもなんていうか完全に舞踏だよね。ヒップホップだけじゃない、おれは舞踏のほうも極めに極めて極め抜いてしまっているんだから!あらゆる分野を極めぬいたアーティスト、香川県出身川染喜弘です!」
 金属たわしで空き缶をこすり、その音をピックアップで増幅させる。「だんだん現代音楽入ってきたけど、(ピックアップの接触が乱れてグリッジノイズが発生する)これなんだよ!お前、この曲譜面におこしてみ?今も休符入ったよね?現代音楽のほうも知りつくしている香川県出身川染喜弘です!(急に横柄になって)お前らさ、わかるか?この態度、横柄だよね?でも違うんだよ。よく謙遜して『いやー、ライブきてくれて嬉しいんだけど、自信ないんだよね』とか言うやついるけど、じゃあステージあがんなよ、と。横柄だよね、態度でかいよね。でもいいんだよ!謙遜は別の場所ですればいいんだ。天才天才。日本人の性格だから、謙遜するのはわかる。だけど、おれは横柄でいいんだよ、本当に天才なんだから」
 「R&Bってあると思うんだけど、チャックペリーが60年代にやってたロックンロールのR&Bと宇多田ヒカルとかがやってるR&Bがあって、(激昂して)ややこしいんじゃ!わけていこうぜ!(客にマイクを向けて)わけていこうぜ、セイ!」川染と客で「わけていこうぜ」の掛け合いミニマル。「これもミニマル入っちゃってるんだから、わけていこうぜ!」客の「わけていこうぜ!」に苦言を呈す。「違う!『わけていこうぜ』はソウルなんだよ!わかるか?お前の『わけていこうぜ』には魂がこもってないんだ!もっと腹から声を出せ!違う!一回、横になれ!横になれば腹式呼吸ができるから横になれ!お前、今日、このあとそこのタブチの山盛りカレーが辛すぎて、火ぃ吹いてそのままおまえんち全焼する可能性もゼロじゃないんだ、オッケー、腹から声出していけ!」と横たわりながら「わけていこうぜ!」を掛け合いで絶叫する。「じゃああれいっちゃうか」といって、トルシエコールと稲本コール。稲本コールにダブ処理をかけるように円盤店員に指示する。「稲本じゃなくて、イネモトな」といって、イネモトコールに展開する。イネモトコールをする客の口を掌で押さえて、声にエフェクトをかけたり、「やめろ!はじめろ!」「立て!座れ!」と指示をしたりする。「(もじもじする女の声と動きで)私もな〜、R&Bの区別つかんやんかー。うちチャックペリーとかむっちゃ好きやんかー。上京してバンド組もうと思ってな〜、メンボのところにな〜、『R&B』好きな人募集って書いてんやんか〜。そんで、あー、どうしよう、R&B好きな人とバンドやれるやーん、と思って期待してたら、宇多田ヒカル好きな人から電話きてんやんかー(激昂して)ややこしいんじゃ!わけていこうぜ!」
 譜面に書かれた言葉をラップし、突如「しまっていこー!」と叫び始める。延々「しまっていこー!」を叫び続けていると、何かの弾みでビートが変化し、レゲエっぽいうわものが乗った能天気なビートになる。「チャンスオペレーション入ったー!夏が始まったんだ!」店員にディレイをかけるように要求する。「ジョーヤブーキ、強かったね、戦ったね、ジョーヤブーキ……おっさん、おれはもう右の眼が、見えてねえんだよ。大丈夫だよ、おっさんと同じさ。そのおかげで、攻撃のホコ先がずれてやっこさんの顔面にかえってうまいぐあいにあたってくれるのさ……おっと、漫画の台詞のサンプリングをしてしまった!」続いて「赤忍、青忍、黒忍、マーブル忍、玉虫忍!いまおれは忍者の色を考えているんだよ、玉虫忍はやばいよね!目立ちすぎだよね!金忍、銀忍、マーブル忍!」
 ディレイはそのままで「オッケー、じゃあ得意技言っちゃおうか。ディズニーランドのスタッフの物まねを!」といって、エコーがかかった状態でコンポジションを展開する。「みなさぁん!右手に見えますのが、恐ろしい恐ろしい怪物のすむ洞窟でございます!皆様の行く手には、(空中に腕で円を描きながら)大きな大きな怪物がその口をあけていまや遅しと待ち受けています!みなさまは、これからトロッコに乗ってこの洞窟を進んでいきます!ああ、恐ろしい!みなさんの行く先には恐ろしい怪物がいます!みなさん幸運を!いってらっしゃいませ!いってらっしゃいませ!」さらに、「宇宙系のアトラクションにいこう!」といって似たようなアトラクションを展開する。「似てるかもしれないけど、別に似ててもいいんだよ!オッケー、いこう!みなさん、あちらに見えます、赤く光る惑星、あれはゲルマニウム大王の住む惑星でございます!みなさんは今からゲルマニウム大王の住む惑星に旅をしなければなりません。ゲルマニウム大王の住む惑星には、人類が最も恐れなければならない三人の妖精がいます!その三人を紹介いたしましょう。プーアル、ゲラメッチョ、ヨードチンキ伯爵の三人になります。みなさんはゲルマニウム温泉(本当に温泉って言いました)を倒さなければなりません!(声色をかえて)がははははー、わしがゲルマニウム温泉じゃ。わしは既にお前たちの地球を丸呑みするために、フォークを購入してある。お前たちの寿命はもはやいくばくもないのじゃ、がははははー!(声色をかえて)ああ、なんと恐ろしいゲルマニウム温泉!みなさま行ってらっしゃいませ!行ってらっしゃいませ!」ディレイをカットして、「うーん、80点だね。つまり満点なんだ!どういうことだと思う?80点満点なんだよ!80点満点中、80点、つまり百点だ!なんとかなるじゃなーい」
 すべての動きをジョンカビラの声色で自分で実況、解説するコンポジション。「川染。川染、空き缶を拾います。川染。川染から川染。川染、空き缶をブラッシング。川染。川染、川染、川染。川染。緊迫した空気です。川染、前に出る。川染、ブラッシング、川染、さらに前に出る。川染から川添。(普段のラップ口調で)リンドバーグの川添さん、絶対ギターの人と結婚すると思ってたのに、違うのと結婚したっしょ!(女の子口調で)私もリンドバーグ好きやってんやんか〜、川添さんなんでギターの人と結婚しなかったんやろ〜!(口調をカビラに戻して)川染、リンドバーグの薀蓄。激しいブラッシング、川染から川染へ、川染!川染!川染!ゴール前です、川染、おーっと!これはポストだ!いけませんねえ、冷静さを欠いています。どうですか、解説のダルマさん。(ラップ口調で)ダルマさんって野球の解説の人だよね!カビラとダルマさん一緒に解説しないっしょ!サッカーと野球は違うっしょ!このパラレルワールドの創出を全力で楽しんでいけ!(カビラ口調に戻って)川染、鉄のわっかを手に取ります。川染、鉄にピックアップをつけます。川染、ピックアップを落とす、川染、机をアンプリファイ!川染、わっかを叩きます!川染、リバーブをかける、川染、ここでメタルパーカッション!ゴール!ゴールゴールゴールゴールゴ〜ル!川染、インテリジェンスゴール!スローモーションで見てみましょう。(と、スローモーションでゴールの再現をしながら、スローモーションを継続したままカズダンス、ビスマルクの動きをする)ここで前半戦終了です」
 ドラムのタムを肩に掲げてつつみのように構えてそれをポンポン手で打ちながら、ヨーデルを歌う。そのまま、会場内を徘徊する。「ヨーロレイッヒー!ヨーロレイッヒー!このつつみ叩きながら、ヨーデル歌う音楽、奇抜すぎるかもしれない。でも(円盤内の棚を指し示しながら)こんだけの音楽があったら、こういう音楽があったっていいだろう!(と、タムを床において猛然とタムを殴り倒して)条太郎さーん!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!ドララララララララ!(客にむかって)暴力的に見えるかもしれないけど、これは暴力じゃないんだよ。巨人の篠塚いるよね?ちょっと古いけど、篠塚が、こう、(凄い形相で球を投げるアクションをしながら)セカンドからホームに向けてバックホームする、これは暴力じゃないよね?そういうことなんだ!(バットを構えるアクションをしながら)クロマティがボールを打つのは暴力じゃないよね?そういうことなんだ!オラオラオラオラオラ!(再び肩にかついで)ヨーロレイッヒー!」
 スネアドラムを歯ブラシやたわしでこするコンポジション。「前衛的なドラミングしちゃってるけど、これが新しいかどうかは問題じゃないんだ。誰かがやっていたってかまわない。たとえば、ギターを世界で初めて弾いた奴が、ギターを弾いてるほかの奴を見て『それパクリじゃん』って否定するのは間違ってるよね?そういうことなんだ!でも、おれが今日こうしてドラムをたわしでこすった、これと同じことをするのは許さん。なぜなら、これは究極のスネアこしこしなのだから。」と暴論を吐く。
 占いをする。客の手のひらを見ながら、「長生きするね。頭いいね。勉強好きなんだね。60歳で転機が訪れるね。結婚するね、60で。二人見えるよ、赤ん坊が。60で子供生むね。あと猫飼うね、60で。七匹買うね。一匹目は白だね、二匹目も白。三匹目は黒い猫だ。70歳で四匹目買うね。Max/Mspを買うね、60歳で。」占いをしながら、どういう流れかは忘れたが、ハイタッチが始まり、激しいハイタッチミニマル、それから格ゲーのコンボが展開される。さまざまな格ゲーキャラクターの必殺技が手のひらに叩き込まれる。30連コンボくらい叩き込んでは、格ゲーキャラの勝利ポーズを演じる。テリーボガードやさくら、三島平八、Yosimituなど。
 最後のコンポジション「自己顕示欲の歌」をピアノを打鍵しながら歌い上げる。「自己顕示欲が強すぎて、愛されたいという気持ちが強すぎて、押入れのなかで布団をかぶって震えてるんじゃないかい、自然の音に耳を傾けてごらんよ、小川のせせらぎや鳥の声を聞こうよ!」というような歌詞。一回歌い上げたあと、「設定を変えてもう一回歌います。レコード大賞を受賞したというフィルタリングをかけてもう一回歌います」といって、感極まって泣き崩れながら歌う歌手の形態模写をする。さらに、サプライズでお母さんがきたという設定を設け、客に肩を抱いてもらいながら号泣の熱唱をし、ライブ終了。


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