12月19日八丁堀七針
 会場が暗転した状態でライブ開始。LEDの電飾を全身に巻きつけて発光させ、しばし無音のまま姿勢を崩さず静かに佇む。しかし五分もたたないうちに照明をつけて「どうもー!川染喜弘でーっす!今日はラッキーでハッピーになれちゃうような究極の芸術を今から約一時間、お前達に叩きつけてやる!というより、お前らは既にしてラッキーじゃ!なぜか。お前らはこの究極の芸術家である川染喜弘とついに出逢ってしまったのだから!オッケー、行こう!」シーケンサーからビート。
 「(かばんの中からコーデュロイパンツを取り出し、ピックアップマイクを装着する)いいか、お前達、よく聞け。今日の前衛ヒップホップの後韻は、そうこの(と、コーデュロイパンツに足を突っ込みながら前後に激しく揺さぶって)コーデュロイパンツをがばがばやる音なんだよ!ラップの最後にこの(揺さぶって)コーデュロイパンツがばがばが挿入されることにより、全てのリリックの韻が踏めてしまうっていう寸法(ズボンをがばがばやる音)オッケー、どんどん韻踏んでいこう(ズボンをがばがばやる音)!」
 宇宙を想起させるテープ音を流しながら、発話など一切行わずに、光に吸い込まれるアクションをする。椅子の上にたって、豆電球に恍惚とした表情で吸い込まれようとする。しばらく光の下で吸い込まれる動きをやったあと、突然、椅子から降りて、テープの音を止め、わざとらしく転倒して尻餅をつき、「ふう……いや、まったく危ないところだった。いま、おれは光に吸い込まれそうになっていたんだ。危なかったね……今後も、このライブ中、何度も何度も光の中に吸い込まれそうになるかもしれない。そのときは、お前達お客様の《愛》と《感受性》によって光に吸い込まれそうになっているおれを救い出してほしいんだ!あっ、いけない、また光が!」再び、テープを再生し、ひかりの下で踊る。ややあってテープ音を止めて尻餅、「危なかった。あっ、危ない!」反復。この光に吸い込まれそうになるコンポジションは演奏と演奏の合間にカットアップ的に挿入される。
 《川染喜弘のおっかけ》という設定の人物を捏造する。客の一人を川染喜弘の熱烈なファンと見立てて表現の指導。川染喜弘の歌の振り付けが完璧なキャラという設定だったので、川染が実際に歌いながら踊り、客を指導する。「シュビドゥビシュビドゥビシュビドュワ、シュビドゥビシュビドゥビシュビドュワ、おれ富士山かい?英語で出口はなんという?EXITをEJECTだと思っとったわ」というような歌詞に完璧に構築され尽くした間抜けすぎる振り付けを施していく川染。振り付けをしながらどんどんエスカレートしていき、歌詞も振り付けもどんどんめちゃくちゃなものになっていく。川染喜弘があまりにも酷いアドリブをかましたときは、熱烈なおっかけが胸の前でバッテンマークを出すように指導される。しばし、川染の熱唱と捏造された客の踊りが展開する。
 「グミをくちゃくちゃやる音で大盛り上がり、ダイブなどをしていこうぜ!前衛盛り上がりしていこうぜ!飛べるか渋谷!(J-PopミュージシャンがMCで客をあおる時の形態模写をしながら)一階!二階!アリーナ!踊り場!地下!大気圏!メキシコ!(ストリートファイターの発音で)タイランド!ジャパーン!メキシコ!二階!タイランド!一階!三階!宇宙!地下!地球の奥深く、中心地!」グミを一つ食ってはダイブ、一つ食ってはダイブし、3個のグミを食べ、一通り前衛盛り上がりしてライブ終了。

12月24新大久保アースダム
 「今日はライブ時間が短い上に、準備時間も込みで1時間しか演奏時間がないんだ!だからおれは今から準備をするのだけど、この準備からもうすでにライブは始まっているんだ!この機材を準備する究極の芸術家、川染喜弘の高い身体芸術性に目を向け、涙を流すなどの感動を得てほしい。それでは準備します」といって、準備開始=ライブ開始。
 シーケンサーからビート、跳躍しながら「川染喜弘、だ!究極の芸術に立ち会えたお前らはラッキーだ!ラッキーで、ハッピーなんだ!おめでとう!おめでとう!メリークリスマス!shi-bu-ya-!メリークリスマス、メリークリスマス!オッケー、今日もたくさん曲を書き下ろしてきてるから!メリークリスマス!渋谷!」  人間イルミネーション再び。暗転した状態で電飾を全身に巻きつけ、電源を入れて発光。光に包まれた川染喜弘が会場内を荘厳な間抜けさで徘徊する。と、徘徊がはじまってそれほど時間がたってないうちにトラブル発生、イルミネーションの電源が全部落ちる。暗くなった場内に、川染喜弘の肉声による「おい、どうなってんのよ!関係者関係者!関係者関係者!関係者関係者!関係者関係者!関係者関係者!関係者関係者!」という反復演奏が響く。「こういうトラブルは全然余裕である。次の楽曲に行く」といって、楽譜を見ながらコンポジションの準備。「いま、もたついてるよね?でもここを見てほしい。むしろここだけを見てほしいくらいなんじゃ!おれはいまもたついとんぞ!究極のもたつきを全力で感受していけ!」
 クリスマスプレゼントを楽しみに待つ子供のコンポジション。靴下を枕元に置き、寝息を立てる。はじめはその寝息のボイスパフォーマンスと寝返りの身体表現、寝言によるラップ。「うーん、サンタさん、何くれるんだろう……朝になったら、靴下にムニャ本当にプレゼント入っているのだろうか」起床する演技をし、枕もとの靴下を発見する様をオーバーに演じる。靴下の中には無理矢理エフェクターのフランジャーが詰め込まれている。取り出すまで何が入っているかわからないからワクワクしている子供の形態模写をしながらゆっくりフランジャーを取り出す。「わー!やったー!これ欲しかったんだよねー!サンタさんありがとう!よーし、早速使ってみよう」ホワイトノイズが録音されたテープ音にフランジャーをかます。ビートにあわせて「ホワイトノイズにフランジャーかけたらシワシワ言うよね?言わないかい、言うよね?そう、ホワイトノイズにフランジャーかけたらシワシワ言うんだよ。これが言いたかっただけなのさ!ホワイトノイズにフランジャーかけたらシワシワ言うんだよ。ホワイトノイズにフランジャーかけたらシワシワ言うんだよ!」
 人力で5.1chサラウンドシステムの音を再現する。客を中心に集めて、周りを歩きながらラップする。一番後ろを通過するときだけ低音のボイスを出し、ウーファーを表現する。「古新聞古雑誌ちりがみ交換」→「石焼き芋」→「さお竹」の形態模写を適度に入れ替えながら客の周りを歩きまくる。途中「石焼き芋」の演奏をしているときは、ハードロック調の歌い方で歌い上げて走る。
 「コンポジション書いてきたんだけど、本当は書く時間がないんだよ、なんでかわかるか?おれはな、仕事仕事仕事仕事で、仕事ばっかりやってるんだよ!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!間違ってるよね、毎日仕事ばかりしている。芸術の世界の仕組み、形態、現状がまったくわからないよね。仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!アホかー!違うだろうが!ライブライブ、インタビュー、ライブライブライブライブ、インタビュー、ホリデー、ライブライブ、ツアーツアーツアーツアーツアーインタビューくらいにしろやボケ!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!say!オッケー、段々トリップしてきちゃったんじゃないの?おい、照明さん、ストロボ点滅させてくれ!」といって、客に仕事仕事、のリリックを反復させながら、レイブパーティーにいる客の形態模写をする。途中、「ライブライブ、ライブライブ、ライブライブ、インタビュー」に内容が変わったが、すぐ「仕事仕事、仕事仕事、仕事仕事、ライブ!」に戻る。「ミニマルミュージック感じていこうぜ!!!!」
 音でしりとり。ピックアップを装着して演奏する楽器をしりとりのルールで変更していく。しかし、シールドが絡まったり準備してきた道具が見つからなかったりと相当もたつく。「これよ。このもたつき。ここでまあ出て行っちゃうお客さまがいるのだけど、何もわかってない。歌でいうと、おれのもたつきはサビにあたる部分なんだよ!一番聴かなきゃダメなところなんだよ!おれのもたつきは究極のもたつきなんだ。そこを全力で感受していけ」その後、ピックアップしりとりを4ターンほど敢行して、時間切れでライブ終了。


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