3月10日 高円寺円盤
段ボールを切り抜いて作った人形(顔の部分にサイン波が書かれている)(サインウェーブくん)をシーケンサーの上で躍らせて足の部分で鍵盤を操作して音を出す。テープからジャーマンサイケのようなビート。
「(段ボールの「サインウェーブくん」が喋っているように演奏しながら)俺がなぜ、表現にユーモアを選んでいるかというと、そう、子供のころ、漫画を読まなかったか?くだらない漫画本を読んで、何か大切なものを受け取ったことはないだろうか?お菓子食べながら漫画読みーの、自分のタイミングで寝ーの、そして、また漫画読みーの、ポリポリポリポリお菓子食べーの、また自分のタイミングで寝ーの、そいでもってまた漫画読みーの、、そしたらゲラゲラ笑いながらも、何か人生を生きていく上で大切なものを受け取った、、そんな経験はないだろうか?おれが自分のパフォーマンスの中にユーモアの要素を多く取り入れているのはそういうコンセプトに乗っ取ってのことなんだ、オッケー行こう、ハクショーン!そして、今日の前衛極まりないヒップホップの後韻はハクショーン!リリックとリリックの間にハクショーン!このように、クシャミを挿入することによって生じるハクショーン!オッケー、いこう、今日のライブもかなりテンパってる、かーなーりーのストーンテンパルパイロッツなわけなんだけども、このテンパり具合は完全にプロフェッショナルなテンパりだから!ハクショーン!ハクショーン!このテンぱりからも大切な何かをゲットアロングトゥギャザー山根康弘してくれ!ハクショーン!」
頭の上にビデオカメラを設置し、黒いガムテープで無理やり固定し、そのカメラが撮影している映像(川染喜弘から見た視界)をプロジェクターでスクリーンに投影する。
「今日の楽曲はそう、バーチャルリアリティ川染喜弘だ!とうとうここまで来てしまったよね、今日はみなさんは、僕のライブを見ながら、同時に僕の視界を擬似的に体験することができてしまう、、と、こういう楽曲になっています。そして、今日は、そう、肩書きを名乗らなければいけない。どうも、みなさんこんばんは、版画家の川染喜弘です、、そう、前衛的なことをやりたいと思っている人にアドバイスしたい、いいか、『肩書きがすべて』だ!自分がやっている活動から最も遠い職業を名乗ることによって、それは自然と前衛的な表現になる、どうも、版画家の川染喜弘です、今日は僕の版画を見に来てくれてどうもありがとう、、こうやって自分の作品を版画と言い張っていこうよ、そして、この作品を『版画芸術』に送りつけよう!版画の展示会にこのパフォーマンスを持っていこう!『これのどこに版画の要素が…?』と勝手に思ってくれるはずだ、そして、版画雑誌の表紙を飾る『版画を塗り替えた男、川染喜弘…!』オッケーいこう!今から残り約40分繰り広げられる版画を全力で感受していけ!(カメラをつけた状態でスクリーンの方向を向き、スクリーンにハレーションが起こる)おわ、これ、どうなっちゃってんのよ、ハレーション起こして完全に“オプ”ってんじゃないの、、そして、このビートとあいまって、これはもう完全にジャーマンサイケだよね、いや、これこそがドイツの版画だよね、、ドイツの版画ヤバいわ〜、、」
「(袋からカウベル、テープレコーダー、マジックテープの財布、ガラクタなどを取り出し)今日持ってきた楽器は全部黒で統一されている。というのも、今日の自分のファッションを見ていただければ分かるように、着るものがこれしかなくて、偶然にも全身が真っ黒になってしまったんだね、全身黒ずくめの男、川染喜弘…ここから着想を得て、使用する楽器も黒で統一しようと考えて今日は家にある黒いものを片っ端から持ってきたというわけ。今日着ている服、これは仕事先の忘れ物、そして、このズボンはもらい物、靴は拾った靴、すべて、これは偶然性によって集められたファッション、つまりチャンスオペレーションファッションなのだ、様々なファッションのジャンルがあるだろう、(ウッドベースを弾くような動きをしながらJ−Pop歌唱風に)パンクファッション、モード、ネイビールック♪そして、チャンスオペレーションファッション、(飛び上がりながら)フーッ!チャンスオペレーションファアッション、フーッ!チャンスオペレーションファッション、フーッ!オッケー、いこう!」
黒い楽器をピックアップでアンプリファイする演奏をしながら、カメラでスクリーンにハレーションを起こす。ガムテープの粘着が弱り、カメラが何度も頭からズリ落ちるようになり、映像が少しずつナナメになっていく。
「俺のライブから様々なことを読み取って欲しい、たとえば、そうだな。。この『サインウェーブ君』がテーブルから落下するのを見て、ああ、そうなんかい、と。今自分がラップトップで制作している音楽の先が見えなかったけど、サインウェーブの音を下げればよかったのか、と。そういうことを勝手に読み取ってほしい。そして、ライブが終わったあとに、『いやー、川染さんのお陰で曲の構想がまとまりましたよ!』といって握手しにきてほしい。演者の俺はそれを聴いても完全に(?Д?)という感じになるだろう。だが、どんどん恣意的な判断でポジティブなメッセージを読み取っていってほしい、どんな些細なことでも見逃さないように注意して全力で感受する、これが俺の提唱する芸術の新概念の一つ、、これはまだ名前をつけてなかった、だから今決めてしまおう!自分のやっていることには名前をつけてしまえばいい、さっきのチャンスオペレーションファッションもそうだったし、芸術はそうやって名づけることでジャンルになるんだ、今から新しい概念が名づけられる瞬間に立ち会えんぞ!チャンスオペレーションファッション、フーッ!ダメよ、ちゃんとやってもらわきゃ、、さて、この些細なことでも注意深く鑑賞するという態度を促すこの芸術の新概念の名前は、、アテンションアート!オッケー、まだ(仮)の段階だけど、これでガンガン掲示板やブログなどに書き込みしてほしい、そしたら、おれも家に帰ってからアテンションアートで検索かけまくるから!まあしかし、これはまだ(仮)の段階なので後でまた名づけなおす可能性もあります、、お前たちはいま、新しい版画の誕生に立ち会ってるぞ!そして、俺はライブでたびたびモタついたりテンパったりしていたと思う、あれも実は、名前があるんだ、あのモタつき、テンパりなどは、そう、その名もスローアートだ!だから、これからは、『あ、モタついてるな』と思って見過ごすのではなく、『お、スローアートだ』と、こうやって積極的に感受してほしい、オッケー、チャンスオペレーションファッション、(飛び上がりながら)フーッ!ありがとう川染喜弘でした!」



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