7月7日 NADiff a/p/a/r/t
会場の三周年記念イベント。フェイスペインティングを施し、青いユニフォーム風のTシャツ(胸や背中のところにあるSTAFFというロゴを、養生テープにて隠し、その上からJAPANと書く)を着て、サッカーの半ズボン、スパイクに普通の靴下という、サッカーのサポーターのファッションにて登場。
かまやつひろしの『我が良き友よ』の弾き語り。一フレーズ歌うごとに「ヘイ!」といって会場を煽る。パフォーマンス直前に、客にはペットボトルが手渡されており、そのペットボトルをたたく音がサッカースタジアムの熱狂の音をカバーする。引き続いて、『たなばたさま』の歌唱。こちらは、川染喜弘に続く形で客も歌唱することを要求される。
サンプラーから、サッカーの試合中のスタジアムの音を流しながら、リフティングを繰り出す川染。「小学校二年以来やってないから、ブランクがあるもんで、三回しかリフティングできないけど、いくぞー!」といって、何度もリフティングに挑戦する。
客を数人集め、円になってもらいボールをやさしいタッチ(作品があるため、勢いよく蹴れないという配慮)でパス回しをしてもらい、そのボールの軌道で星を描く演奏。パスがまわされている間、日本サッカーの応援歌『VAMOS!NIPPON』を熱唱しながら客を煽る川染。「オー!バモ日本〜!バモ日本〜バモ日本〜日本〜、オイッ!オイッ!オイオイオイッ!」という川染のミニマル応援歌にあわせてペットボトルが打ち鳴らされる。
ラストは、パス回しのラストに、センタリング(やさしいタッチの)をあげ、それにあわせて川染喜弘がオーバーヘッドキックを決める、という演奏。オーバーヘッドキックが決まると同時に勢いよく立ち上がり、「日本」の部分を「NADiff」に改変した『VAMOS!NADiff』を熱唱し、ライブ終了。

7月8日 浅草橋天才算数塾
DJぷりぷり氏の個展のクロージングイベントでの演奏。電気を一切使わない完全アコースティックのライブ。前説から。「先ほど、同じ場所で見させていただいたパフォーマンスは非常に感動的だったけども、自分のライブは、そのパフォーマンスのあとだと、かなり変てこな、クエスチョンマークだらけの表現にうつるかもしれない、そう、たとえるなら、ジャンプを読んでて、ワンピースの直後に、ジョジョの奇妙な冒険が載ってるようなものだと考えてほしい」と川染。しかし、「ジョジョがわからない方もいらっしゃるようなので」という配慮がなされ、老若男女がそろった会場で共有できるような漫画のタイトルを客とともに見つけ出そうとしていく川染。「ケシカスくん」や「ペンギンの問題」の名前を出すことによって子供の理解も得られ、前説がなんとか前進する。「ここにいる人間は宇宙の長い歴史の中の一瞬でしかないが、奇跡的に立ち会っている、同じシチュエーション、同じ人が出会うことは二度とないだろう、人と人の出会いに乾杯!」という前説も。
前説のあとは、フリースタイルラップ。フリースタイルラップの途中に詳細な説明を取り入れながら(前衛的なヒップホップを追及している、というリリック)、ペットボトルをたたく音をビートにして言葉を繋いでいく川染。交通標識の『止まれ』が命令形であることに対する言及ラップをスタート地点にして、何度もその主題に立ち返りながらラップを展開していく川染。
七味唐辛子を入れたりする陶器の蓋をこすりあわせる演奏。「かなり秘境に突入する人間なので、ほっといたらこういう演奏を何十分もしてしまうことがあるのだけど」と補足を入れながら、蓋をこすりあわせる。二つの陶器を使い、それぞれの音色の違いも聞かせる。卓上に置かれた二つの陶器の蓋を交互にこすりつける姿は、ターンテーブルのスクラッチにも見える。こすりながら、その音をビートにしてラップも展開。
「コーンポタージュの底に沈んだ黄金の宝をマウスにインさせたい」→「コーンポタージュの底に沈んだ黄金の宝はどうしたら浮上する」→「実家の汲み取り式便所はバキュームカー呼ばないとどんどん浮上してくる、迫り来る糞便、浮上してくる生理用品」→「浮上する不条理、不条理演劇よろしくシェイクスピアの太ももをスピアーでチクっと刺す」という風にリリックが展開される。
オブジェを馬に見立てて競馬をする作品。ドラムスティック(ゴーゴースティック)、ビニール袋(ビニールクシャクシャ)、エフェクター(エフェクターホース)、陶器(ユズコショウ、トックリスター)、ビン(名前失念)、カーペットのコロコロ(名前失念)、一円玉、管(クルクルピーピー)などがゲートに並ぶ。川染は、そのオブジェを動かしたり音を出したりしながら、レースの実況をする。電気を通さなければ使えないとされていたエフェクターは、蓋を緩めてバネの上で蓋が跳ねるようにして、その音をだす。「こんな風にエフェクターが使われるなんて、製作者は夢にも思わなかったはずだ」と川染。手にしたノートには競馬の実況がビッシリと書かれており、その台本どおりにレースが展開していく。川染が実況している馬(楽器)の音を出しながら少しずつ前へ前へと動かしていく演奏。演奏の途中、何度も「こんな演奏で面食らうかもしれないが、仕事場で考えてノートに書いてきてるわけですよ」と補足し、「職場ではまじめな青年として通っているのだけど、たまに、このノートを落としてしまうことがある。自分がこういった音楽活動をしているということを知らない人がこのノート見たら、この競馬の実況が書いてあって『なんじゃこりゃ?』ですよね。それに、俺はメモ魔だから、ノートに『がんばろう』とか『人に優しくしよう』とか書いてあったりもする、それを読まれるのが恥ずかしいかもしれない」「もし、俺が誰かのノート拾って、この競馬のこと書かれてたら、そいつが仕事じゃない場所で何をやってるかが即座にわかって、感動すると思うんだよね」「タワレコで試聴して、こんな音楽が流れてきたら、、と想像してほしい」
「みなさんと面と向き合ってFace to face」というリリックから「as soon as間もなく」の連呼につなぐラップ。客から「as soon asの意味は『間もなく』ではない」という指摘。それに対して川染、「自分は間違って覚えていたようです、、学生のころ、ノートにびっしりas soon asまもなくas soon asまもなくas soon asまもなくと書き続けていた。ほかにも、ifもしもifもしもを延々書き連ねたり、、当時はその行為に何も意味が見出せなかったけど、いま、こうやって、大人になって、パフォーマンスの中でそのノートに書き連ねたヤバい単語を引用することで、作品として昇華される!」と解説し、再び「as soon as間もなく」や歴史の授業で何度もノートに書き写した知識「大塩平八郎の乱!」の連呼をする川染。
『金太郎』の歌を歌おうとするも、メロディが思い出せなかったのでBZの形態模写で歌う川染。主催者のリクエストで、Bzの『love me, I love you』を歌うことに。主催者と相撲をとりながら熱唱する川染。まわしをとられながらも、稲葉的なかっこつけのアクションを欠かさない川染が地面にたたきつけられる。主催者、子供、子供の親族、川染の四人で、「相撲」をモチーフにした前衛オペラを展開。既存の相撲ではありえないファイティングポーズ(柳のように力を受け流す、という相撲スタイル)をとり金太郎の扮装をした主催者にむかって「やい、力太郎、いや、金太郎、お前のパワーで押すという概念、俺には通用しない」と挑発する。主催者、子供、川染が三人同時に土俵に上がる、という変則ルールで相撲をとり、取り組みが終了し、『金太郎』をBZの形態模写で歌いながらライブが終了する。
7月9日 高円寺スタジオドム
サンプラーから変拍子のビートを流しながら「エデュケーション!エモーション!マスコミュニケーション!イルコミュニケーション!」と、ションが最後につく英単語を暴力的な声で叫びまくりながらライブ開始。「やめじゃやめじゃ!」といいながら、アンプから」シールドを抜き、「やっぱやろう!」といってシールドを刺し、グリッチサウンドのような効果を作り出していく川染。「フリースタイルで韻を踏むのもやめじゃ!フロウにのって流暢に言葉つないだりするか!ぜんぶやめじゃ!」といったあと、韻を踏んでしまい、「韻を踏んでしまったことに後悔しとるわ!やめじゃやめじゃ!」といいながら、シールドを抜き、会場を右往左往し、「全部やめたる!二分くらい何も演奏しない!」といって、横になったまま動かなくなってしまう場面も。演奏しながら靴を放り投げ、靴下を脱ぎすて、楽器をスライドさせ、コードが絡み合い、川染のまわりにチャンスオペレーションの方法でオブジェが配列されていく。
グラスゴーシーンのバンドやローファイバンド、ギターポップのバンド名などを引用しまくるボイスパフォーマンス。様々なバンド名が引用されたあと、ラストには必ず「スポーツ、ギター!!」とシャウトする、それが何度もミニマル演奏される。「固有名詞を引用しちゃいけないっていう芸術のルール誰が作ったの、固有名詞ガンガン出していきたいね」といって、再びバンド名を呼び始め、「スポーツ、ギター!!」とデス声でシャウトする。ティーンエイジファンクラブから、アタリ・ティーンエイジ・ライオットにつながり、アサリ・ティーンエイジと改変され、あさりちゃんのリリックにつながる場面も。そのたびに「Run-D.M.C.」を引き合いに出しながら、言葉をうまくつなげてしまうフリースタイルラップをディスる。「ディスりあっている二人を、第三者の、安全な立場からディスっていこうか」
渋谷センター街、ゼンモール周辺をラップで描写しながら「オクトパスアーミーで初めて服買ったときすごい垢抜けたような気持ちになってた」
電動えんぴつ削りにコンタクトマイクを接着させ、その振動、えんぴつを削る音をアンプリファイする。これも、「やめだ!」「やっぱやろう」の繰り返しで何度もマイクがアンプから引き抜かれたり刺されたりする。「ファットボーイスリムはダサい」
マイクの音量が大きすぎたのか、スピーカーからハウリングノイズが発生する。ハウリング音の発生源を探すも見つからず、そのまま落ち着いた流れるような動きでスネアドラムをスピーカーの前に置き、ノイズでスネアのスプリングが振動するサウンドを作り出す。
「プログレで安心するやつもいるだろう、すぐに8ビートたたき出すやついると思うんだけど、プログレの複雑なリズムや変拍子で安定感を得るようなやつだっているだろ」カン、ノイ、グルグル、クラスター、アシュラテンペルといったクラウトロックのバンド名を何度も引用するボイスパフォーマンス。最後に発話するバンド名のときは、エコーのかかったマイクに持ちかえてダブ処理をかける。
椅子に腹ばいになって、頭を下に、足を斜め上にあげてサンプラーを演奏する、「ゲームセンターあらし」奏法で激しいノイズを出す。
サンプラーの変拍子ビートの音を上げて、音色を変え、その音にあわせてゲインをあげまくったアンプでえんぴつ削りの激しいノイズを出し、クラウトロックのバンド名を大声で呼び続ける、というそれまでの演奏を並行して行う。明確な終わりの流れ(ライブをまとめるというような流れ)がない状態で、ライブの始まりのときと同様、唐突にライブが終わる(時間制限にあわせて演奏を中断する、久々のスタイル)

7月13日 高円寺円盤
「無人島でわけのわからない表現に立ち会う」の前説から、「今日はかなりクエスチョン指数高めのライブになると思う」と川染。「ワハハハハハー!」と笑い続ける演奏。しばらく笑い続けたのち、「まあ、これもデーモン小暮閣下のカバーなわけだが、、ワハハハハー!いや、デーモン小暮のカバーとか説明するのは野暮だったわ!説明いらんかったわ」
「α β γ δ ε ζ η θ ι…」と段ボールにギリシア文字を描き込んでいきながら、「アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、エプシロン、、」とラップしていく川染。と、突然、絶叫しながら段ボールに殴る蹴るを繰り出し、「やめじゃ!やっぱやろう、やめじゃ!」を繰り返しながら靴や靴下を脱いで思いっきり投げ捨てたり、テーブルをひっくり返して卓上の機材を全部床に落としたり、椅子に足をのせ頭を下にした姿勢でラップするなどする。「こういったパフォーマンスをすると、すぐに退廃的とか分裂症ですねとか言われるのだけど、アホか!そんな風に思うお前らの方が退廃的で分裂症じゃ!こっちはなー、この一見すると暴力的なパフォーマンスの中にありったけのラブとピースをなー、こめとんのや!それをなー、退廃とか、分裂とか、、やめじゃ!やめじゃ!いや、やっぱやろう、やめじゃ!表面しか見ようとしないお前らの腐った感性、価値観との戦いじゃ!この俺の(頭を下にした天地逆転の)姿からラブとピース感じとれや!やめじゃやめじゃ!やっぱやろう」
円盤の入り口から上半身だけ入場し、半分店内、半分店の外という状態でパフォーマンスする。
「日本人が、同じ国籍を持つ日本人に向けて、日本語という言語を使ってラップして意思を伝えようとしてしまうこと」に疑問を投げかけながら、かみちぎったビニール袋を口に入れてフィルタリングをかけながらラップ、靴下を口に入れてフィルタリングをかけながらラップする。靴下のときは、何度もえずく。
円盤の外に飛び出し、通行人として街の人と溶け込んで、道をただ歩いて往復しつづける川染の姿を、円盤の窓から眺める、という作品。しかし、この作品に対して「面白さ」や「(客との)コミュニケーション」を求めた客が現れ、川染に話しかけ、かみ合わない対話が繰り広げられる(質問の内容はほとんど思い出せない)。その客の要求にあわせて、今度は、街の外を歩く川染が、歩きながら携帯電話で話をする、シャドーボクシングをしながら道を通り過ぎる、話しながら歩いている集団の後ろで、まるでその集団の一員であるかのように、ジェスチャーでリアクションしながら通り過ぎるなど、やや演劇的な要素を取り入れたパフォーマンスに変化する。
段ボールにニコニコ顔の人の絵を描き、その手の部分にガムテープでマイクを固定し、足元にサンプラーを置く(演者の誕生)。その演者を路上に放置して、それを窓から見る、というパフォーマンスだったようだが、道に物を置きっぱなしにすると他の店などにも迷惑になるという理由から、円盤ステージ奥の窓の前に置かれることに。川染は「今日のパフォーマーはあいつだ!」といいながら客席側に身をおいてパフォーマンスをする。
足の裏に顔をかき、その口の部分にガムテープを貼る。その口がふさがれた状態の足の裏の、口の部分にマイクを向け続ける川染。「ニイハオ!ナマステ!シェイシェイ!ニイハオ!」と発話しつづけるボイスパフォーマンス。そこに「ファスト批評家」が登場し、「お前のその中国語ラップを、おれが持ち時間一秒以内のファスト批評で批評してやろう」といって、「ニッ!」と聞こえる短い声で批評をくわえていく川染。「ニイハオ!」やフリースタイルの間に、「ニッ!」というファスト批評が挟み込まれ、ラップに独特のリズムが生まれていく。
「人がしゃべる時に口がパクパクするのが気持ち悪いんじゃ!足でラップができたら、、と思ったら、(ガムテープで口をふさがれた足を指さしながら)これよ、足から声がでるならば!口がパクパクするの気持ち悪いんじゃ!物食べる機能と声出す機能が同時にある口が気持ち悪いんじゃ!」といって、ガムテープで自分の顔面をぐるぐる巻きにして、口と鼻をふさいでいく川染。声がほとんど出なくなった状態で、フーフーという荒い息遣いをしながら、ガムテープで口をふさがれた足にマイクを向け、自身のふさがれた口からは「ボンジュール!ボンジュール!」と声がうまく出せないのにフランス語でオーディエンス。その、マイクを足に向ける演奏をしばらく続けて、ライブ終了。

7月17日 渋谷O-nest
円盤ジャンボリー。柄物ワンピースの上に紫色のガウン?をはおったファッションの川染。テープからビート。
「どうも、川染喜弘だ。今日は、円盤夏祭りということで、まずは、円盤店主の田口史人について、少しばかり、語らせてもらう。俺は、円盤という場所に、そして、田口史人という人間に、どれだけ支えてもらってきたか、わからない。円盤オープン当初から、いろいろとお世話になっていて、なんじゃかんじゃで定期イベントをやらせていただいたり、いろんな機会を与えていただいたり、さまざまな領域で、この円盤という店と、自分の活動は、繋がる部分が多かった。今の自分がこうして活動できているのも、ひとつは、この円盤という店と、田口史人という人間がいたからだといっても、過言ではない。音楽を続けていいのか、続けられるのかどうか悩んでいるときに、円盤でイベントがあったりして、円盤に足を踏み入れると、ワケわからん、大量の、しょうもないCDに囲まれて、一人もくもくと作業している田口史人の姿があって、俺はその姿に、強い共感を覚えて、何かを二人でやったりとかはしてないけれど、日々の会話なんかを通して、俺は、田口史人のことを、ある意味では師匠のような存在だと思って活動してきたつもりだ。ありがとう、円盤!その円盤の夏祭り、めちゃくちゃ気合い入れていくぞ!円盤行くぞー!オイシャー!ヨッシャー!」
円盤店長田口史人との演奏。テープから流れる打ち上げ花火の音にあわせて、田口氏がスケッチブックに花火の絵を描いていく、という演奏。寝っ転がった状態で絵を描く田口史人の頭髪をわしづかみにしながら「おい!花火の絵に今までのお前のすべてをかけろや!」とアジる。花火の音にあわせて花火の絵をどんどん打ち上げていく田口史人、その絵を拾いながら「なんだこの絵は」「ミロか」「ダリか」「ミケランジェロか」とコメントしていく川染。スケッチブックを放り投げた田口史人と壮絶な取っ組み合いをしながら、ペットボトルや楽器を会場中にまき散らして喧嘩のようなパフォーマンスを展開していく。「お前に教わったサウンドじゃぞ!」「(取っ組み合いの最中、偶発的にサンプラーのボタンが押されて音が出て)おい、こら、今の聞いたか、チャンオペじゃねーか!(無視する田口史人に)お前の好きなジョン・ケージだろうが!」などと言いながら、頭を叩き合ったり投げ飛ばしたりする二人。もみ合いになりながら、プチプチをつぶす演奏をする二人。「おら、こっちつぶすからお前はそっちから潰せや」といって、プチプチを潰すサウンドを出す二人。コンタクトマイクでプチプチの音を拾おうとする川染に、「サボってないでプチプチ潰せや!」といって頭をたたき、それに対して「プチプチの音アンプリファイしようとしとるんじゃボケが!」と田口史人の頭をたたき、「俺は肉体派なんじゃ!生音でやれや!」と川染の頭を叩き、、というやりとりの中でプチプチの音が会場に鳴り続ける。「ちょっと時間」といって、田口史人がステージから去っていき、再び川染一人に。
二股にわかれた木の枝を垂直に立てて、手を放して、木が倒れた先に石を置いて、その石の場所に木を立てて倒して、その倒れた先に石を、、という方法で行き先を決めていくという演奏。ビニール袋の中の石をぜんぶおいたら、その最終地点に横たわり、目を閉じて動かなくなる川染。しばらく川染が寝ていると、再び田口史人が、Tシャツにパンツ一丁という格好で戻ってくる。
言葉を交わさず、会場に散らばった楽器やがらくたの山を、拾っては投げ、拾っては投げして、投げられた物が偶然性の強い音を出す。「探してるもんあったぞー!」と川染。「最後にまた、打ち上げ花火のサウンド流すから、そしたら、こいつが、命がけでしょうもない絵描くから、それで『えんばーん!たーまやー!』でライブ終わらせっから!こら、おっさん、きいてんのか、おっさん!お前の今までのすべてをかけて描けやコラ!」といって、田口史人が絵を描いている間、「円盤」コールを客とともに行う川染。しばらく円盤コールをして、田口史人の絵が完成。打ち上げ花火の音と同時に、それなりに長い時間をかけて描いたとはとても思えないような素晴らしく稚拙な線の花火の絵を掲げる田口史人。川染と田口史人が肩を組みながら「えーんばーん!たーまやー!」と客とともに叫び、田口史人が「川染喜弘!」、川染が「円盤、田口史人!」と互いを紹介してライブ終了。会場は二人の演奏の痕跡で大量に物が散らばっている状態に。

7月29日 吉祥寺FourthFloor
サンプラーから変拍子のビート。
「どうも、川染喜弘だ!これから繰り広げられるライブが、一見、ワケのわからない、そして、ユーモア極まりないライブになると思う。だが、俺は、いつも、今日のこのライブも、自分の遺書だと思って、全力でお届けしている!いくぞー!」「聴覚と嗅覚!おなら!放屁!おならは聴覚と嗅覚を同時に刺激するまったく新しい芸術の概念だ。俺たちは芋を食べることで放屁することができる。それをポテト・サウンドと称して追求してもいいだろう」という放屁にまつわるリリックを何度も繰り返しながら、フリースタイルラップに突入していく。「俺の地元の香川県では、朝から讃岐うどんを食べるやつが二割」「Slipknotヤバい。クワトロで7年間働いていたが、Slipknotヤバい」「アニメタルが延々演奏するライブ、あれは凄まじいノイズミュージックだった、王様のライブはとてつもないサイケデリアを奏でていただろう」「100円ショップに打っているラップが、サランラップじゃないくせにサランラップを名乗ってしまっているというヒップホップミュージック」などなど。途中、「村上春樹・ねじまき鳥クロニクル・チャガワ賞(芥川賞ではない)・筒井康隆の実験小説・ヘミングウェイの老人」といった文学にまつわる単語が数多く登場してカットアップされる場面も。フリースタイルラップを続けながら、徳用サイズのヨーグルトの空容器を、おろし金でおろすサウンドをピックアップで拾い、アンプリファイ。金属製のペンのキャップを床に落とす音をピックアップで拾う。「ものを食べる機能の口をパクパクさせながら、お客様が日本人だということで、こうやって日本語でラップをしてしまうということ自体に疑問を抱く、歯並びが変わるだけで音色が変わってしまうだろう、500年先の人々よ、この紀貫之ラップから何を感じ取る、ナマステ、シェイシェイ、ニイハオ、ボンジュール、日本人の皆様が見てくださっているからこその、ここで、ボンジュール、ナマステ、ニイハオ!」普通のマイクと、エコーのエフェクトがかかったマイクを交互に使いながら、ラップに任意のタイミングでダブ処理をかけていく川染。
カセットテープから流れる指令に従ってパフォーマンスをする、『指令ライブ』のコンポジション。テープから川染の低い声。「川染喜弘よ。足元にあるピックアップで、近くの何かをこする音を出せ。出しながら、高域をあげていけ。次は、中域をあげていけ、ある一定のレベルにまであげたら、今度は下げていけ、その上げる、下げるを繰り返しながら、ホーメイをしろ。ホーメイの合間に、ラップを挿入しろ。ピアノの一番低い音を弾け、Cのコードを抑え、アルペジオを奏でろ(会場にピアノがないのでスルーする川染)。ピックアップを胸に押し当ててお客様に心音をお聞かせしろ。低域をあげていけ。もし、音が拾えてないときは、ゲインをあげろ。マイクを抜いて、シールドを二本挿せ。シールドの先端を両手で握り、グリッジサウンドを出せ。合間にホーメイを挿入しろ。靴をパカパカさせてその音をマイクで拾え。お客様が聞きとれない音量でポエトリーリーディングしろ。なお、このテープは自動的に消滅する」
「うちの地元ではかぼちゃのことを南京と呼ぶ」「南京は甘いから糖分が含まれているのではないかと思い、夜に食べることを躊躇してしまう人いると思うんだけど、かぼちゃ、栄養があるように思う、近所の八百屋で100円で売ってるとついつい買ってしまう」というような、かぼちゃ(南京)にまつわるリリックをしばらく繰り返した後に、機材の音を止め、ライブ終了。



戻る inserted by FC2 system