9月2日 東高円寺二万電圧
「どうも、川染喜弘だ。俺のライブは、大きくわけると2パターンあって、タイプA・限りないラブ&ピースを前面に打ち出して皆さんに愛をお届けするピースフルなステージ、タイプB・わけわからん超エクスペリメンタル、超アブストラクトなステージ、、呼んでくださった主催の方が、先日のかなりのタイプBのステージを見て呼んでくれたということもあるし、今夜はタイプBでいこうと思う!だが、退廃じゃないぞ!このステージには一分一秒、命がけの、ありったけのラブとピースがこめられているってことを忘れるな。オッケー、いこう!」
「運動会のとき、自分はスプーンレースが速かった。徒競走は遅くて、クラスでも最下位くらいだったのに、スプーンレースとなると四位くらいになった。よくわからないけれどスプーンレースが速いという俺の身体性なんなのよ。今日はなー!俺がなー!スプーンレースがクラスで四番目くらいに速かったというなー!プチ情報をなー!しょうもないプチ情報をなー!お届けするために命がけでライブしにきてるんじゃ!」
「銀のスプーンをこすったら上空4000メートルまで飛んでいって」というリリックが頻出。高速ラップをしながら「こうやってなー!スピード感ばっちりの、韻もばっちりのなー、手癖足癖ラップはもう十分なんじゃ!」といって、韻を踏んだり口癖のラップが出たときは口に手を当てながらターザンのような「アワワワワ!」という声を出して中断する。
サンプラーからスムースジャズのようなサンプリングのアーバンなビートを流しながら、電動マッサージ機を二つ使い、サンプラーを演奏し、シーケンスを組み、ガバをリアルタイムで制作するという作品。「(電動マッサージ機をサンプラーに押し付けながら)このビートがガバメントアルファなガバでしょうが」しかし、電動マッサージ機をガムテープで固定するのがなかなかうまくいかない。振動でテープが何度もはがれるのにもめげずに固定のために格闘するサウンドを展開する川染。「駄目なやつがたまたまホームラン打ったときばっかり評価されるのはよくない。ホームランより美しい三振があるってことを見せてやる!俺もなんだかんだホームランとか何本か打ってきちゃったタイプだから、ホームランを期待されてしまうことが多いけれど、おれはなー、全力でなー、ホームランよりも美しい三振をなー、表現しとるんじゃ!命がけの三振見とけよ!」固定することをやめた途端、電動マッサージ機との連携で偶然にもガバのシーケンスが組まれて一瞬完成するも、うっかりボタンを押してすぐに消してしまう。「いまうっかり押したボタンでめちゃくちゃいいビートできてたけど、またうっかり消してしまったよね!こういうことなんだよ!美しい三振!」
「トリビュート・トゥ・エジソン。。エジソンを賛美しよう。エジソンさんありがと〜!エジソンさんが蓄音機発明してくれなかったら、俺たちレコ発イベントとかできなかったよ〜、蓄音機が発明されなかったら、こんなライブできなかったし、音楽の歴史が全然発展しなかったよー、エジソンさーん!」とエジソンを賛美する川染。「エジソンコール」をはさみ、「いや、もうノーエジソンだろ」と言い出し、「ノーエジソン」「ノーエジソン」と発話しながら楽器の電源を次から次へと落としていく川染。
木片をこする音をアンプリファイする。
普通のマイクとエコーマイクを交互に使いながら、楽譜に書かれた言葉を発話して、最後の一文字にエコーをかけるボイスパフォーマンス。「スプリンター」「子供は風の子、元気な子」「ミスマッチ」「金網デスマッチ」「わかりませ〜ん」「ちょっと待って、キャッチ入った」「かけ直してよい?」などの言葉を何度も繰り返し発話。「今から不吉なこと言うけどなー、このライブが終わったあと、俺も事故って死んだりするかもしれないだろ、可能性はゼロじゃないだろ、毎回のライブが俺のラストライブ、遺言なんじゃ!いいか、このあと事故ったら、これが俺の最後の言葉じゃ!」と宣言したのち「ちょっと待って、キャッチ入った」のエコー。その後もボイスパフォーマンスの反復をしてライブ終了。結果的に、冒頭でラップした「タイプA・タイプB」の両面が全体にわたってバランスよく織り交ぜられたライブとなった。

9月14日 高円寺円盤
穂高亜希子さんの『ひかるゆめ』発売記念イベントということで、まず、円盤、自分自身、そして、穂高亜希子さんにまつわる、8年間の個人的な記憶・歴史をラップする川染。「円盤ができた当初、円盤店長の田口さんが、いやさ、この田口トモロヲが、田口史人が、いや、田口トモロヲが、僕が当時やってた伝説的なバンドがあるのだけど、それに対して、週一でライブやってみないか?と誘ってくださった。しかも、一年間ライブしたら、それをビデオとしてリリースしたいんだけど、と。これがもうメチャクチャ嬉しくて。当時の自分はバイオリズムが下がりまくりで、ピカソで言うところの青の時代だったワケだけど、円盤の田口トモロヲはさ、いや、史人は、トモロヲと史人をLとRにパンニングしながら、青の時代の自分に声をかけてくださった。それから何年か活動をやらせていただいて、30歳くらいになるころかな?バイオリズムのほうもかなりあがってきて、うなぎのぼりで、で、その30歳になるときも、この、円盤の田口トモロヲが、24時間ライブをやらないか?と誘ってきてくださって、もう、ノリにノッてる時期だったし、ぜひやらせてくださいと、そして、やりきったわけで、24時間中一度もトイレに行かなかったことなどはもっと評価されていいと思うのだけど、それはさておき、円盤の田口トモロヲが、僕の青の時代も、今の自分もどっちも見てくれているというのが、貴重だし、すごく嬉しいよね。24時間ライブというのは、自分にとっては、円盤に凱旋するという感覚があった。もちろん、円盤ではずっとライブをやっていたから、凱旋というのはおかしいのかもしれないけれど、心の凱旋だ!穂高亜希子さんとは、円盤オープン当初くらいからの古い付き合いで、例の毎週やっていたライブにもご出演していただいたこともあって、穂高亜希子さんもかなりの青の時代を経験していたと思う。その穂高亜希子さんとは、一時期疎遠になっていたこともあったのだけど、最近はまたお互いの活動を見るようになったりして、縁が続いていて、その穂高亜希子さんのアルバムが出るという、そして、それが、自分が青の時代を抜け出したときと同じ年齢だという、、こんなめでたい日はないでしょう!となったら、これはもう、円盤という縁の深い場所でお祝いするしかないでしょう!そう、今日は穂高さんにとっても、心の凱旋だし、新しい出発の一日なんだ。だから、みなさんでこの、最高にめでたい日をお祝いしましょう!」
「まばたき」のタイミングにあわせてサンプラーを演奏する。カメラで自分の顔を撮影して投影。まばたきがなかなか発生しないということで、ドライヤーを顔に当てて、意図的にドライアイ状態にし、まばたきの回数を増やす。まばたく瞬間とボタンを押すタイミングの絶妙なズレ。
トランシーなトラックが流れるテレコを自身の背中とハズレッシヴのメンバーの背中にガムテープで固定し、ハズレッシヴメンバーとエンジンを組みながら、「『ひかるゆめ』発売おめでとう!」と声を合わせて回転する。「おめでとうのオーラが、竜のごとくうねりながら天に上昇していくのが見えただろう?」
TJ(テープジョッキー)。一曲目は『ケロヨンソング』、客にガラスのコップを配り、任意のタイミングでそれぞれ乾杯してもらってCD発売をお祝いするコンポジション。ディレイマイクの前で乾杯するディレイ乾杯も。二曲目はリンドバーグ『Happy Birthday』「知らない人は文明の利器であるところのインターネットなどを駆使して調べてほしい」穂高亜希子さんのCDが発売するということは、ハッピーバースディのひとつの形でもある、と川染。「この曲にまつわるエピソードをひとつ、、これは僕が始めて買ったCDに入っていた曲なんだけど、子供のころからこの曲の歌詞が好きで。で、一番古い友達が、中学生になったときに俺の誕生日にこれを一曲だけ入れたテープを送ってくれたのがメチャクチャ嬉しくて、、で、それから十年以上経って、そいつが29才になったときに、そいつにメールで、この『Happy Birthday』の歌詞を全文書いて送ったのよね、めちゃくちゃヤバいっしょ!」二曲目はバンクバンドの『ありがとう』。TJ中、DJの形態模写(ジャミロクワイ帽を深くかぶり、メガネをかけ、タバコをふかし、ブレイクダンスをする)、ユーモアたっぷりの身体表現(野球・サッカー・ボウリングなどのエアスポーツ、エア投げ縄、エア忍者、無言劇、ダンスなど)を展開する。
点滅するマリア像をカメラで撮影し、プロジェクターで投影。穂高亜希子さんのアルバム収録曲『道』を口笛で吹いたテープ音源を流しながら、会場に横になって目を閉じる川染。口笛のトラックが終わり、ライブ終了。



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