12月10日 高円寺スタジオDOM
時間が短縮され、差し迫った状態でライブ開始。高速でラップ。ラスコーの壁画やピーナッツバターに関するリリック。ややあって、「サウンドノベル」というコンポジションが開始される。川染喜弘によって物語と二つの選択肢が提示され、客が選択肢を選ぶことによって、物語がサウンドと共に展開していく、という演奏。
「川の上流から下流にかけて背の高い順に並んだ男たちがスロープのような状態になっている。その頭の上を、赤いペンギンと青いペンギンが階段を上るようにして歩いていくと、その先頭にいるもっとも背の高い男の帽子の上に、ビー球を高級な宝石だと偽って密輸して金儲けをしようとしている男がいる。さて、、
「その密輸商の動脈に待ち針を入れて、血液の流れとともに心臓に流し込み、密輸を阻止するならA」
「赤いペンギンと青いペンギンの間に黄色いペンギンを入れて信号機だと言い張るならB、さあどっち??」
…という風にして展開していく。
「蟹、美味いと思うんだけど、蟹を作ってくれたやつマジでありがとう。蟹は作ったとかじゃないから、作ったとしたらそれは神とかになるんだろうけど、マジでありがとう。さて、、」
「蟹の甲羅をあけて蟹ミソを取り出すならA」
「蟹の甲羅をあけてご飯をつめて、一回甲羅で蓋をして、驚かせたい一心で客の前に持っていき、ゴムで助走をつけてその反動を利用して飛翔、コンドルよろしく、プレスリーのヒラヒラみたいのつけながら甲羅の上空を移動する際に、カメレオンのオモチャの舌の部分を甲羅に貼り付け、それを引っぺがし、その反動で帰ってくる蟹の甲羅をよけるリンボーダンス、その様子を版画にしてギャラリーに展示するならB」
「あなたが行ったギャラリーにはバイクを使ったインスタレーションがある。そのバイクは永久機関で動く仕組みになっており、会場にはバイクの爆音が鳴り響いている、さて、あなたは」
「バイクにのって円山町でレコード買いあさるならA」
「そのバイクのインスタレーションに関するミニコミを勝手に作って、古本屋に配布しまくるならB」
「ワイングラスを口にした古本屋の店長に、『許可とったほうがいいんじゃないの?』と言われたあなた。さて、」
「古本屋の店員に『すいませんでした』と謝るそぶりをして、その店員の頭頂部に頭突きをかまし、から竹割りするならA」
「鉄パイプを持ってその店の中で暴れまわるならB」
「江ノ島ゆきの電車に乗っているあなた。さて」
「このまま江ノ島に向かうならA」
「自慢のトラックで新宿に引き返すならB」
「食パン三枚とポテトチップスだったら食パンのほうが塩分が高い。」という豆知識ラップ。「ピーナッツバター考えたやつありがとう」「カップラーメン考えたやつありがとう」と食べ物に対する感謝を伝えるラップ。「ポテトチップスは、まだ、『ヤバすぎるアート』として認識されてないところがある。」
「トイレに訪問者(インターホンの音)だ。さて、、」
「ドアをノックする音が、プログレッシブなリズムに…ならA(といって、ピックアップで小刻みにノックする音をアンプリファイ)」
「鉄パイプで後頭部を激しく殴打するならB」
「(激昂して)こんなんやめじゃー!」と何度もサウンドノベルを中断しようとする。
「サザエって美味しいと思うんだけど、あなたは、いまサザエを食べようとしている。しかし、サザエの身は取り出しにくい。さて、あなたは、、」
「半田ごてでおはしの形状を変えて、サザエの奥にまで届くような自作のはしを作り、それで身をほじくるならA」
「さざえをわしづかみにして、ソフトボールの要領で投げる、そのときにできる腕の真円の軌道を、シャッタースピードを早めたカメラで撮影して残し、その軌道部分の残像をWEBデザイナーに頼んでフォトショップで加工してもらい、空の写真に差し替えてもらうならB」
「バークリー理論(リサーチ)」と書かれた楽譜をちぎる。「これが楽譜じゃ!駐車場のボックスの中でこんなん思いついたら書いて、それで演奏しとんのや!バークリー理論??なんだそりゃ!あとで調べようと思ったんだろうな!」
「サザエを無事に取り出したあなたの前に、鳥が襲い掛かる。その鳥のくちばしはプラスチック製で、自由に伸縮して、カメレオンのおもちゃの舌のように伸びてきてはあなたのサザエを奪おうとしてくる。羽根は透けていて、身体はフォトショップによって空の写真に差し替えられている。そんな鳥があなたに襲い掛かってきた。さて、、(激昂して)もうやめじゃー!14年活動してここにたどり着いてんのや!もう経済的に限界がきてて、あと二年もしたらなー、実家に帰らなきゃいけなくなるという、その中で、こんなサンプラーつかって、テクノロジーミュージックっていうんですか?ああいうのやらずになー、、何がサウンドノベルじゃ!!このビートだってなー、(サンプラー備え付けのテクノのビートを流す)これで踊るのが普通だと思うんだけど、(自分の作った不連続なノイズビートに戻し)これ!!それで、サウンドノベルって、どうなっとんのじゃー!!あほかー!ここにに美しさを感じろやー!…というこのパフォーマンスを紙飛行機にして飛ばすならC」
「あほか!今日もなー、撮影してもらってるんだけどなー、たとえばだ、この撮影してもらった映像をだなー、DVD作品としてリリースするとするわな。それでなー、一年間でなー、せいぜい売れて20枚なんじゃ!!いいか、うまくいってなー、毎年一枚リリースできたとしてもだなー、20枚かける20年で、お前、何枚になると思っとんのじゃ!400枚じゃ!おれももう34才になってなー、20年後には生きてるかどうかわからんし、さっき言ったように二年後にはもう実家に帰らなきゃいけないかもだし、頭もハゲあがってきているような気がするし、それで、本気でパフォーマンスして、極めに極め抜いて、せいぜいが400枚じゃー!この先30年だとしても、600枚じゃ!200年だとどうなる??どっちにしろ、そんなDVD-Rはなー、引越しするときにでも捨てられたりするんじゃ!だからこそ、そういうディスクをだなー、ゴミ捨て場で見つけたらどんどん拾っていこうぜ〜!そうじゃないディスクもな!これはな、お涙頂戴でいってるんじゃないんじゃ!わかるか?あほかー!何がサウンドノベルじゃ!14年かけてここまでたどり着いて、あと30年かけても600枚じゃ!…ならD」
Dが選択され、「ありがとうございました、川染喜弘でした」でライブ終了。

12月14日 高円寺円盤
「音を楽しむと書いて音楽、その音楽の起源は、、」といって、音楽の起源をラップする川染。「ト音記号の端っこと端っこを小人が引っ張り合って、ゴム状のト音記号が伸びきったところで手を話し手を繰り返し、白とピンクのダッフルコートとラバーソウルをはいた小人たちが何度も何度もト音記号を引っ張りながら伸ばして」「メヌエットとは比較的ゆったりとしたリズムで優雅に踊られる宮廷舞踊のこと!」と何度も発話。
カメラに撮影された身体をプロジェクターに投影しそれを撮影することで、合わせ鏡のように自分の体が増殖している映像をバックにライブ。それを意識した体の使い方になる。
椅子とテーブルの上にだらしなく身体をさらけ出した状態で「インターネットを30代で始めた人間からすると、いま、10代くらいからインターネットに触れてる輩が増えてて、インターネットでセンスのいい音楽、動画サイトなんかで、いくらでも聴き放題っていう現状があって、どんどんハイテクノロジーの方向、ハイセンスの方向へ向かってると思うんだけど、正直めっちゃうらやましいとは思うし、そういう方向に憧れて向かおうとしたときもあったけれど、今こそ、(靴を脱ぎ捨てながら)こっちの、ローファイの方向へ突き進もうぜ!メヌエットとは比較的ゆったりとしたリズムで優雅に踊られる宮廷舞踊のこと!メヌエットとは比較的ゆったりとしたリズムで優雅に踊られる宮廷舞踊のこと!これなら、ハイテクノロジーで成立するアートに対抗できるぞー!図書館巡ってフリージャズ発見して一喜一憂していた30代、いると思うんだけど、今はなー、なんでもなー、センスのいい音楽聴き放題なんじゃ!映画とかもなー、俺はミクロキッズのミルク飛び込むシーンで大喜びしてた10代だったけど、今の10代はなー、みんな早熟すぎて同じ頃にもっとすごい、アヴァンギャルドな音楽とか聴きまくってるでしょうが、どんどんスタイリッシュでセンスのいい、そして、ハイテクノロジーの方向に向かっていくという流れがあるなかで、あえて、今こそ、ローファイ極まりないこっちに戻ってきたほうがいいぞー!(手で車をバックを誘導するような動きをしながら)もどれもどれ!こっち側もどれ!まだ間に合うぞー!テクノロジーに対抗するには、これしかないぞー!もどれもどれ!」
「俺がすべての芸術の概念を変える。そして、全身全霊をかけて、今回がラストライブだと思って、お届けしている。みなさん、お金も時間もなかなかないと思いますので、この川染のパフォーマンス以外の芸術以外にお金を使うのをやめて、他のあらゆる嗜好品を我慢して、このライブにのぞんでほしい!」と要求。
豆の豆知識を披露するラップ。食用の豆の名前を様々な方法で何度も発話していく。
コップを置くたびに、テーブルにおかれたエフェクターのかかったマイクが音を拾う。
「俺たち円山町でレコード買いあさり」をきっかけにフリースタイルを展開するかと思えば、すぐに横たわる、というような行動を繰り返し「なにぶん浮き沈みが激しいもので、、」といって、何度も反復。「こんなライブになるはずじゃなかったんだが、、いや、でもなー、これはかなり素の自分に近いから、うまくいっちゃったときのライブより、むしろこっちを評価してほしいわ!これが素じゃ!お酢を飲むと体が柔らかくなってし、まう、という豆知識をみなさんにお届けしてし、MAU、武蔵野美術大学ということで、武蔵野美術大学とは何の関係もないけれど、駅で眼に飛び込んできたMAU武蔵野美術大学が記憶に残っててついついラップに導入してし、MAU、武蔵野美術大学ということで、そうこれがおれの素じゃー!(横になって)アホかー!(立ち上がって)円山町でレコード買いあさり、、オッケー、そう、別に繋がらんわ!素の体をお酢でやわらかくしたものを、ハイテクノロジーからかけ離れたこの素を展示するイベントスペースをMAU武蔵野美術大学に設けまして、それがおれの土地争い、、こんな醜態さらすはずじゃなかった、、でも、この素を評価してほしいわ、むしろ、これを否定されたら、どうしようもないわ、むしろ、素を見れた皆さんは、ハッピーだ!…大衆なんなんじゃコラ!大衆大衆大衆!そう、大衆のオイニーかぎながら醜態さらして、といま、うまく韻を踏めてしまったけれど、そんなんいらんわ、素でいいわ!」と、素の自分をさらけ出すような体とラップをしながらライブ終了。

12月23日 APART ART PART PARTY
一軒屋でのイベント。
ダウンジャケットの裾をこする音をアコースティックと、マイクで増幅した音の両方で演奏。階段のきしみ、ブラインドを指でひっかいたり、開け閉めする音など、初めて訪れた会場の、その会場内に宿った音を解放していく「風水師」のコンポジションからライブ開始。
「小学校の漆谷校長先生(川染喜弘に、冬でも半ズボンをはけと強要してきた、というエピソードとともにその人物が紹介される)」と「自分の父親」が、二人とも面長だ、というところからラップをはじめ「10円玉に刻まれている平等院鳳凰堂」にどんどん色んなものが吸い込まれていく、という展開に繋げる。「平等院鳳凰堂」の門は「メフィストとスフィンクスが狛犬のようになりながら守っている(たまに、ラップが混乱して、メフィストとタランチュラになったりする)」、その門の奥には「漆谷校長先生が待ち構えており、顔の長さをメジャーで正確にはかっている」、「川染喜弘の父親はベートーヴェンに顔が似ている/そして、そんなベートーヴェン似の父親は、細い身体でピアノを運ぶ仕事をしていた」、「そんな父親を八つ裂きにする、見えないピアノ線!」と叫んだのち、「いま嘘ついたわ!うちの父親はピアノ線でズタズタに引き裂かれてはないわ!…ダウト!ダウト!ダウト!ダウト!ダウト!ダウト!」とトランプゲーム「ダウト」のようなボイスパフォーマンスを展開していく。
「ハンバーガー考えてくれたやつありがとう!」「チーズバーガー考えてくれたやつマジでありがとう!」と食べ物に感謝。ハンバーガーのパンとパンの間には平等院鳳凰堂や、漆谷校長先生などがはさまれている、その平等院鳳凰堂の門は、もちろん、メフィストとスフィンクスが守っている。
「サッカーやってるやつの家にいくと、ほぼ確実に、そいつの本棚にはサッカー漫画がそろっているわけだが、なんでお前らは、サッカーやってるからといってサッカー漫画ばっかり集めるんだ!野球してるやつは、野球漫画ばかり持っているというパターンだ、、じゃあ、俺は音楽やってるから、音楽の漫画しか読んじゃいかんのか!アホか!色んなジャンルの漫画読むわ!」
言葉などを使わずに、サンプラーを二台使ってグリッチサウンドと、音響詩のように英単語を読み上げるロボットボイスを組み合わせたビートを淡々と作り上げていく演奏をしばらく続ける。
おもちゃの鉄道レールをカチャカチャさせる音をピックアップマイクで拾ってアンプリファイする。ハンドミキサーのようなものに、マイクをつけてゴリゴリと歯車が回る音をアンプリファイ。回転部に、ビニール袋をどんどん装着していき、手動で動くオブジェのようなものを創作し、物が加わって変化する音をピックアップマイクで拾っていく。
弾き語り「スペースアース」、「ホチキス」、使用するピックによって音色が微妙に変化する前衛的弾き語り「サンノトーレ街」などを披露し、最後は「シッソイドクラハシコート」という歌を披露し、合唱する。客の一人に、サビの盛り上がるところで踊りながらカズーを吹いてもらう。
「お客さまを巻き込む感じにしてしまったので、最後に30秒ほど、内省的な音楽をしてライブを終了させていただきます」といって、サンプラーで音のみの短い演奏をして、ライブ終了。



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