1月9日 渋谷o-nest
一日に二回のパフォーマンス。
一回目。10分間のパフォーマンス。サンプラーからのビートを何回か変化させながら、ラップする。ピックアップでラジコンのコントローラーを操作する音、電池部分のバネをはじく音などをアンプリファイ。ステージ中央にはテーブルが置かれており、そのテーブルの上にはリンゴが一つ(パフォーマンス中、手でも、言及でも、一切なにも触れず、ただ安置されているのみ)。
「川染喜弘だ!円盤新春スペシャル、レギュラー篇へようこそー!そう、俺は、円盤という場所を、自分のリングだと思っている、オープン当初から、始めは週一で、今では月一で、七年間にわたって、レギュラー企画をやらせてもらって、いる!今日はレギュラー陣総集合ということで、まだお会いしたことがないレギュラーのみなさん、はじめましてーッ!いくぞコラー!」
「動物占いってあると思うんだけど、自分の性格を、動物で現しちゃってくれてると思うんだけど、アホか!俺と同じ生年月日だったら、同じ性格なんか!イエー、そう、コアラって動物いると思うんだけど、あいつは見た目に反して、けっこう危険な動物だから気をつけろ、パンダもそうだ、気をつけろ、あいつらはあんなかわいらしい見た目をしているが、肉食動物だから気をつけろ、猫だってそうだ、虎はネコ科の動物だ、俺には、子猫がじゃれあっている姿が、二匹の虎がじゃれあってるように見えるぜ!俺の右目はミカズキモだ」
「みんな釈迦の手のひらの上で踊らされている。ジェフ・ミルズも釈迦の手のひらの上で踊らされている。デリック・メイも釈迦の手のひらの上で踊らされている」
「郵便物受け取るときとか領収書書くときとか、サイン要求されると思うんだけど、楷書でサインするなや!」
などなど。短いながら、ビートとリリックを存分に出し切ったパフォーマンスとなった。
二回目。会場の外にいる川染喜弘が、風船を飛ばし、それを会場の中の窓から見る、という瞬間的な作品。窓の外を、一つ、また一つと風船が浮かんでは消えていき、最後に、大量の風船が空に解き放たれてライブ終了。

1月11日 高円寺円盤
サンプラーからビート。「ライブ会場などにある仕切りはパテンションではなくパーテーションだということを」という言葉訂正ラップからライブ開始。
「猿がランダムにタイピングしていけば、偶然に、かなり低い確率ではあるが、シェイクスピアの作品に到達する」という「無限の猿定理」を援用した演奏、「無限の猿定理による、ゴルドベルク変奏曲(にたどり着くまでのフリージャズじみたピアノ演奏)」。「ゴルドベルク変奏曲」にたどり着くには相当の時間がかかる難しい、ということで、フリージャズなら何とかなるということで、山下洋輔の曲にチャレンジするが、「山下洋輔さんに失礼だろ!」といって、再び「ゴルドベルク変奏曲に取り組む川染。
「いろんな先公いたと思うんだけど、俺が中学のとき、花車先生っていう名前の先生がいて、名前がめっちゃ面白いから、俺たちは、校内放送で花車先生が呼ばれるたびに、ゲラゲラ笑っていた、花車、フラワーカー、、そんな名前だったから、幼少期から、色々といじられたり、苦労の耐えない人生を送ってきたことが想像に難くない花車先生」
「中学のとき、石川先生っていうパンチパーマの先生、いたんだけど、俺の友達の友達で、友達でもないくらいの距離の伊沢ってやつがいて、その伊沢と、パンチパーマの石川先生にまつわるエピソードからリリックをお届けするぜ、井沢は、自分の国語辞書の、アイロンパーマというところの横に、『石川』という書き込みを入れていた、それを偶然、石川先生が、伊沢が開いた辞書を見て発見してしまったときのリリック、、伊沢よ、俺はアイパーじゃなくて、パンチや。これ、このリリック、伊沢よ、俺はアイパーじゃなくて、パンチや」
「俺が通ってた高校は男子校だったんだけど、あの男子校という制度は今すぐにでも廃止したほうがいいと思う。俺が通ってたコンテンポラリー男子校、俺が卒業したあと、共学になったらしい!だったら、俺のときに共学にしといてくれや!あの少年院のような三年間を返してほしい、俺は男子校に通いすぎて女性とのコミュニケーションが不得手になったぜ!」
「日本で一番多い苗字は佐藤!二位は鈴木!三位は高橋!」を連呼するボイスパフォーマンス。しかし、頭にしっかりとランキングが入っていなかったのか、「一位鈴木!」になったり「一位高橋!」になったりする。
カスタネットを手に装着して演奏。その後、電動マッサージ機にカスタネットとピックアップを固定した自動演奏されるオブジェを創作。振動しながら音を出すマッサージ機を指差しながら「見ろやこれ!これ、現代美術やろが!」
「お店なんかで、よく、年下の客が、年上の店員にタメ口で話してる場面があるけれど、あれは、お客様は神様だということで認めていいことなんだろか、客の年齢が上であっても、タメ口を使っていいとは思えないが、、俺もバイト先で、22歳くらいのとび職みたいな若者が、34歳の俺にタメ口を使ってくるのだが、アホかー!22歳のガキが、タメ口使うなやー!そういう決まりをつくれや!国が!法律で!かたや、近所の八百屋の話なんだけど、そこの八百屋のおばちゃん、推定年齢50歳くらいのおばちゃんなんだけど、そのおばちゃんが、客の俺にタメ口使ってくるんだけど、アホかー!お前はなー、自分の店をフレンドリーパークにしたいのかもしれんがなー、俺はあくまでも客なんじゃ!年下でも!俺はなー、22歳のとび職と、50歳の八百屋のおばちゃんの間に挟まれてなー、タメ口とタメ口でサンドイッチ状態なんじゃ!統一しろや!タメ口に関する厳しい戒律つくれや!」と、22歳とび職および50歳八百屋店員のタメ口に対して瞬間的にキレながらラップを展開していく川染。
エコーマイクを使うたびに「キャー!サイケ!」と叫び、「サイケって、ドラッグカルチャーから生まれてるものが多いと思うんだけれど、、ドラッグ、法律違反やろが!全員逮捕されろや(エコーマイク)!キャー!サイケ!!ヒッピーなー、お前らなー、平和とか言ってるけれどなー!お前らみんな犯罪者なんじゃ!逮捕されろや(エコーマイク)!キャー!サイケ!まあ、逮捕しろ発言で怒られたら、謝りますけれど、逮捕されろやー(エコーマイク)!キャー!サイケ!いやすべてのドラッグが悪いとはいわないが、、マツモトキヨシとか、、」
「夜食は身体に悪いぞ」といってライブ終了。諸事情あり、時間がやや余ってしまったので、客のアンコールに応える形で数分間ライブを行う(私は撮影していて色々とバタバタしていたので、リリックはしっかりと聞き取れず)

1月18日 高円寺茶房
二部構成。一部は、サンプラーとエフェクターを駆使したサウンド中心の演奏(*…川染喜弘の演奏は、身体、存在、言語、すべてが「音」であるため、普段のラップなどが行われる演奏も「サウンドのみ」である、、という注釈をつける必要があるだろう)。
二部は、サンプラーからビートを流しながらのラップ。「席巻」という言葉を、最近まで「せっけん」ではなく「せきまき」だと思っていた、というリリックからライブ開始。「席巻のこと“せきまき”だと思ってた、ヨ〜!」「香川から上京してきて、このカルチャースペースにて、席巻がせきまきではなくせっけんであるということを、お伝えしにきた、ヨ〜!」
「秋刀魚」は「あきがたなさかなと書いてサンマ」なので、『毎回、「秋刀魚」を「あきがたなさかな」と発話する』というラップをする予定だったが、脳がてんぱっていたため、「サンマ」と連呼していた。「サンマを調理するとき、三角コーナーに切り落とした頭を捨てたら、そこからサンマににらまれているように感じて怖くないか?おれはそれが怖くて、一時期、サンマを購入して調理することを諦めかけた時期もあったが、100円だからね、三角コーナーからにらみつけるサンマは怖いけれど、いまだに買い続けている」
「携帯電話を買ったらまずサウンドチェックをすると思うんだけど、これ、かなりローファイっしょ」といって、携帯電話に入っているプリセットの音源を流しながら、それをアンプリファイする。「(ピッ、ピッが反復するような音ではなく、チャラリ〜ンみたいな、ややメロディがあるような音を使う場合)著作権を侵害する可能性があるので、サンプリングなども慎重になる。(単調な音を流し)これなら創作性もかなり薄いだろう!」ダンスミュージックじみた着メロを流しながらラップ。「聖徳太子のまわりを十人で取り囲んでいっせいに話しかける」「中大兄皇子と中臣鎌足と菅原道真が小野妹子は男だと教えてくれる」「北条政子の頭巾がヤバい」「ペリーとリー・ペリーが海を渡ってやってくる」など、歴史上の人物を発話するラップにて、ライブ終了。
川染喜弘と狩生健志の二人による「ローファイ」をめぐるトーク。「低予算」「低技術」であることが大きな前提としてあって、最終的にはその人となり、「人格」でローファイであるかどうかを判断する(人格がハイファイな人間はローファイな機材を使おうと技術を低く見せようとどうしてもハイファイに見える)という川染と、自分には目に映るものがほとんどローファイに見える(東京駅でさえも)、という狩生氏の意見が交わされた。「それはもう、ハイファイでもローファイでもなく、単なる『ファイ』なのでは?」という川染喜弘の発言が、このトークを集約していたように感じる。ローファイ、スカム、アウトサイダー、悪趣味あたりの区別がすべて曖昧なままトークが進行していたという印象(「トーク自体がローファイ」という狙いもあったのかもしれないが)。「スカムという言葉は、そもそも言葉が悪い。自分がやっていることや、自分が『いいなー』と思っているキラキラしているものに、カスとかゴミとか、スカム的な言葉があてられているのは、違和感がある」と川染。ローファイかどうかはさておき、音楽(に限らないが)を通して「人格」が出るかどうかにある、と考えている自分にとっては、ローファイという『ジャンル』にはそこまで興味がもてないと感じた。



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